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レポート:TTT vol.04 まちづくりについて考えるワークショップ「ランドスケープが変わると、風景とまちが変わる」

2023年11月27 日(月)19:00〜20:30(開場18:30)、唐戸市場2F大会議室にて、下関の未来とまちづくりについて考えるワークショップ、TTT vol.4が開催されました。

TTT vol.04 を振り返って

今回は一般市民の皆さん20名と専門家・KAMのメンバーを含め29名の方々にご参加いただきました。

◉ゲストスピーカー|熊谷 玄 さん

・STGK Inc 代表
・1973年横浜生まれ。ランドスケープデザイナー。

現代美術作家Studio崔在銀のアシスタント、earthscape inc.を経て、 2009年3月STGK Inc. (株式会社スタジオゲンクマガイ) 設立。
ランドスケープデザインを中心に、人の暮らす風景のデザインを行なっている。
愛知県立芸術大学(2011〜)をはじめ、その他の大学にて非常勤講師を務める。

・一般社団法人ランドスケープアーキテクト連盟理事。
・下関市「あるかぽーと・唐戸エリアマスタープランデザイン会議」ランドスケープデザインの専門家として参画。

「ランドスケープが変わると、風景とまちが変わる」

ワークショップのテーマ
◉ランドスケープデザインについて
◉関門海峡エリアのランドスケープの未来について

海外の事例をはじめ、熊谷さんがこれまで手掛けられた全国の事例を、プレゼンテーション形式でお話しいただきました。
「ランドスケープデザイン」が持つ風景やまちを変えていく力とは?


1.熊谷 玄さんの紹介(KAM 吉田)

2.熊谷さん自己紹介

3.ランドスケープデザインとは

・景観10年、風景100年、風土1000年について。
・下関に当てはめたらどうなのかを考えてみることがランドスケープを考える第一歩。
・これまでの50年とこれからの50年について。

4.街を変えたランドスケープデザインの事例紹介

ニューヨーク|ハイラインパーク(The High Line)
貨物輸送のための高架線を都市に新しい視点場をもたらす公園、みんなで活用していく公園に生まれ変わり、ニューヨークの街が新たに生まれ変わる起爆剤になった。あるものを壊さずに過去の遺産を生かした事例。
https://www.thehighline.org/

ニューヨーク|ブライアントパーク(Bryant Park)
70年代は麻薬密売の舞台になるような誰も近寄れない場所だったが、街の中心として多くの視察が訪れる場所になった。
BCP(事業継続計画:Business Continuity Planning)を立ち上げ、ひたすら街を直していく仕組みを作った。芝生を毎年張り替えるなどの経済効果も生んでいる。
https://bryantpark.org/

◉ 静岡県三島市|源兵衛川
7年の歳月をかけ、川の掃除をして考えながら住民主体で復活し、観光スポットになった。
土地の声をきく(ゲネウスロキ)という考え方に基づき、その場にある素材を生かしながら復活させた結果、この場所に根を張った小さな魅力を沢山作り上げた。
https://www.mishima-kankou.com/spot/287/

3つの事例に共通する下関でも実現したいこと
「自分たちの暮らしを良くしたいということを考えた風景作り」

5.熊谷さん自身が取り組んできた事例

横浜市|グランモール公園
神奈川県横浜市西区みなとみらいにある都市公園(近隣公園)。
2015年(平成27年)度より約2年かけて公園全体の再整備(リニューアル)が実施された。

この公園のコンセプト「港と海と船」をそのまま踏襲し、グリーンインフラの実践を行った。
・桟橋に停泊している船のように人がベンチに座ることを考えた。
・目的がなくても座りたくなるような場所を作った。
・場所は棲み分けるよりも使い分けたほうが豊かになる。
・一つのものに対しての多様な関わり方をデザインした。
・船ゾーンは甲板をイメージしていくつものシーンを作った。
・グレーチングに水面のデザインを掛け合わせた。
https://stgk.jp/JP/projects/gmp/

 新潟県南魚沼市|もりをまねく:Ryugon(龍言)
日本家屋の特徴を活かした、和室の趣を味わえる古民家ホテル。重厚感ある梁や柱で構成された客室は、新潟県各地にあった古民家を移築している。

古い旅館は増築を繰り返していることが多いが、徹底的に引き算をしながら雪国の暮らしや体験と繋げていくデザインを考えた。
・戦後の杉の植樹の話。
・間伐をしていない放置林をどうにかするために活動をすることになり、本を作ることから始めた。その売り上げで木を間伐する仕組み。杉林がなくなることで多様な植物が生えるようになった。
https://stgk.jp/JP/projects/ryugon1/

◉ 横浜市|元町商店街
横浜開港当時、外国人御用達の店が集まって発達した商店街。西洋風の雰囲気が漂う全長600mの元町ショッピングストリート。

・人が通り元町で過ごす時間を作るために建物の1階をセットバックした。
・最初の2・3年で投資をして10年で返済しながらメンテナンスや運営を続けている。
・仮設に見えないベンチを置いて滞在できる場作りをしている。
・リアルで買い物する価値を議論しながら計画し、物と出会う時間、元町時間について議論を続けながらまちづくりをしている。
https://stgk.jp/JP/projects/motomachi-parklet/

◉ 横浜市|左近山みんなのにわ:左近山団地
多くが第一次ベビーブーム時に購入された分譲団地で、「人口減=世帯減」の今後を考えて再生していったプロジェクト。公共ではなく完全民間のコンペの事例。このコンペのすごいところは、水回りの大規模改修時に残った6000万円で改修した点。

・述べ25回のワークショップを行い、住民自身がやりたいことや意見をみんなで集めた。
・熊谷氏のチームは実現したいことの質感を合わせたりデザインの調整を行った。
・住民から「建築当時のわくわくしたエネルギーがまた生まれた!」とのコメントもあったほど、そこに住む人の気持ちが変化していった。
・活動が小さくなると良く無いので熊谷氏自ら現地に拠点を持つことにした。この拠点ではカフェを運営し、団地のことを記録しながら検討・実現できる場所にしている。
・近隣の小学校でランドスケープデザインの授業を請け負っている。
https://stgk.jp/JP/projects/sakonyama/

人の行動を見ることは認知行動学であり、見続けて読み取りを変えたりしていくことでランドスケープデザインができていく。
そういった意味ではみんながランドスケープデザイナーになれる。
「やり続ける=変化できること」であり、良い答えに辿り着けることに繋がる。


6. あるかポート地区のランドスケープデザインについて

熊谷さん:観光地を作るのではなく、下関市民にとって「非日常」もしくは「ハレノヒ」を作るという考えで進めている。下関の人たちが街で過ごすために訪れる場所がこれからの観光を超える。また、そこに人の暮らしがあることが大切。

・グリーンベルトとタテミチの関係性と意味合いの説明。
・2本の重要な動線とタテミチによるシンプルな構成。
・どのように回遊を位置付けるかが重要。
・どこにいても海峡が眺められる事を価値としたい。また、そのためにグリーンベルトを駐車スペースと合わせでデザインしている。
・船が停まる事を前提に独自の場を作ることで色々なことができることに繋がるのではないか。
・海峡をどのように眺められるかでマスタープラン作成に関わった。例えば、マスタープランの絵の中にあるような「橋を作りたいから橋をデザインした」ということではなく、どのような体験をして欲しいかを考えながらデザインした内容をマスタープランに落とし込んでいる。

7. フリーディスカッション、質疑応答

質問-01. 唐戸の街のランドスケープはどのようになりますか?
(質問者:唐戸商店街 山口さん)

熊谷さん:そこには関わっていないので、できるのであればデザインさせて欲しい!

質問-02. ワークショップはどのように取り組んだら良いか?と、講演を聞きながら田中川の道を今後どのようにしたら良いかを考えた(質問者:KAM 木村)

熊谷さん:ワークショップはいつどのようにやるかが大切です。また、合意形成のためのワークショップはするべきではありません。主体形成のワークショップが良いのではないか。

ディスカッション
KAM吉田:マイナスのデザインの考え方が非常に響いた。
・どこかでマインドを変えていかなければならない。
・どこかで変わったという実感があるのか?

泉さん:小さなカフェができて共同浴場を作っていったが、その人たちがランドスケープデザインにも関わっていた。

日下さん:回遊性がある街だから横浜のような事例が成り立っているのかどうか。
熊谷さん:横浜は元々回遊性のある街であった。働いている人は多く通過動線であったが、そこに仕掛けることで人を留めさせることにつながっている。下関ではあるかぽーとに自分の暮らしの何を行うかを考えることが重要。

熊谷さん:下関のあるかポートに何があれば人が来ると思いますか?
日下さん:目的を作りに行くことも必要ではないでしょうか。


まとめ

TTT vol.4は月曜日に開催されましたが、たくさんの皆さんにご参加いただきました。
ワークショップは熊谷さんの経歴紹介に始まり、海外の事例やご自身の仕事や事例の説明に加えて、「下関であればどのようにしたいのか」という問いを絡ませながらレクチャーしていただきました。

また、海峡エリアにおけるマスタープランやそこに込めた想いを丁寧にご紹介いただきました。
特に印象的だったのは、「形ではなく体験のためのデザイン思考」。
ご自身の作品の全てがその土地ならではの特徴・環境・課題を読み取りながらその場所のためのオリジナルの場所になっていました。
レクチャーの最後に、熊谷さんから参加者に向けて「海峡エリアにどんなものが欲しいですか?」という問いかけがあるなど、90分というわずかな時間が参加型のワークショップになり、参加者の皆さんとの闊達な意見交換会となりました。

熊谷さん、ありがとうございました!

次回のTTT vol.5 は2024年1月29日(月)に開催予定です。
ゲストスピーカーは長門湯本温泉にある1881年創業の老舗旅館「大谷山荘」の5代目・大谷和弘さんをお迎えします。
詳しい情報はしばらくお待ちください。

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